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合格者インタビュー ★ 前編

インタビュー @カフェユニゾン

平岡昌也 (アーケイド代表)

比嘉七海 (石川高校3年/沖縄県立芸術大学工芸・推薦入試合格)

金城妃美佳 (普天間高校3年/沖縄県立芸術大学絵画・推薦入試合格)

沖縄県立芸術大学 推薦入試 合格者 インタビュー

→今日は、インタビューよろしくお願いします。これまでアーケイドで沢山対話を重ねてきて、二人のこと勿論先生は知ってるんだけど、後輩たちに受験シーズンのことを伝える意味でいろいろ本音を聞かせてね。

まずは、七海さん。将来の夢を教えてください。

★はい。将来は高校の美術教諭になりたいと思っています。大学で専攻する工芸分野のこと等教えることができたらなと考えています。

七海さんの中で、美術の先生になりたいっていう想いが先だったの?それとも、工芸を大学で学んでみたいなっていう想いが先だったの?

 

★はい。美術の先生になりたいなって思ったのが中学生の時で、工芸分野に進みたいなと思ったのが高校性の時です。高校生活のはじめの頃は、教育大への進学も視野にいれていました。だけど、私が以前バレー部だったこともあって、いつか部活(美術部)の顧問も任されるとしたら、しっかり実技も教えられる先生になりたいなと思うようになっていきました。平岡先生が「美術の先生になるのが夢だったら、工芸も良いよね!」って。「日常に侵透してる芸術だから。高校生にも馴染みがあって、身近な美術の楽しさから伝えていけるのは魅力だよね!」って言ってもらえたのが大きいですね。響いたんですよ。それで、いろいろまずは調べてみようと思って、壺屋の博物館とかいろんな美術館とかに、やちむんとか紅型とか観に行ったら、意外に関わっていたんですよ、自分が。中学校の頃の文化祭の時に、組踊をやったんですけど、その時の衣装が、紅型で出来ていて。その時の印象が、綺麗だなって、感動してたんですよ。

 

→実は、七海さんの生活の中にも芸術があったんだっていう。

 

★はい。潜んでて。その時にはじめて、あぁ何気ない生活の中に、工芸って潜んでて、私たちに感動を与えてくれてたんだなって。やちむんとかだって、日常目にはするんですけど、詳しいことは学ばないと分からないじゃないですか。高校で普通科だったら、知ろうと思っても学ぶ機会もあんまりない気がして。これから先無くなってしまわないように、そういう工芸の素晴らしさをちゃんと伝えていける先生になれたらなって、思っています。最初は漠然とした夢だったんですが、今はもう工芸分野に進むこと以外の道は考えられません。とにかく、工芸を習いたい気持ちでいっぱいですね。

 

→すごい素敵。これからが楽しみだね。このまま続けて七海さんに聞いていこっかな。

そうは言っても、何処の美大にも工芸科ってあると思うんだけど、なんで沖縄の芸大に行こうと思ったの?

 

はい。沖縄県立芸大でしか学べないことの1つに、やちむんとか紅型があると思うんですけど、それらを専門的に深く学びたかったんです。県外だったら浅くなっちゃう気がして。自分が学びたいのは、沖縄の文化だったり、沖縄に生まれたことで感じる感性とか、生まれ育ってきた沖縄の土地の刺激を受けてつくった工芸品だったりするので、沖縄の芸大だなって思ってますね。

 

→もうちょっとさかのぼるんだけど。昔バレー部だったじゃん。それを途中で退部して、夢に向かって専念するっていうタイミングが、早かった気がするんだよね。別に、進路と関係なくても、引退まで部活やってそれから受験する子もアーケイドには毎年いるし。七海さんの中で、その早い決断に至ったのは、何か理由があるの?夢中になれるものが見つかったんだから素敵なことで、悪い話ではないと思ってるけどね。

 

高校でバレー部に入ったことで、1日の多くの時間と情熱をそこに向けていて。そんな中、高校の美術の先生が5回変わったんですけど、それもあって、なかなか美術をちゃんと学べる環境にないのが気になりだして。アーケイドに通いはじめた時は、部活と両立していたんですが、大会前とかアーケイドに行けない時期がもどかしくて、やっぱり絵が描きたいんだなって気づく時がありました。あとやっぱりアーケイドの雰囲気がとっても好きなんです。みんな美大に行きたいって人が集まっているんで、皆で描いてる時が楽しいんです。七海が2年生の時にアーケイドに入ったんですけど、先輩たちからの刺激もすごくあって、それで芸術に専念することにしました。遅いかなとも思っていたんですけどね。

 

→人によるよね。確かにそれでも遅いって思う人もいるし。七海さんは理解力があったからね、時期として遅いと思ったことはないよ。

 

★ただ、学校生活を疎かにしたことはないと思っているんですけど。そのぶん休みがちだったじゃないですか(笑)テスト勉強で休みますとか先生にメールしても、いつも平岡先生はそれを応援してくれるので、学校との両立ができたんだと思います。

 

→それぞれのスケジュールで計画性をもって過ごすことが高校卒業後も大事だし、がんじがらめにして頑張れたとしても意味ないもんね。そういう意味で、各々の実技の時間以外のことを信じてるではあるね。テスト勉強頑張ったり、部活頑張ったり、それが結果として休みがちなことだったとしても、その分アーケイドに来れた時は集中して頑張ってくれるかなって。

じゃあ次の質問。推薦入試について。狭き門なわけで、妃美佳さんだったら県内枠1名、七海さんだったら3名の枠だったわけじゃん。しっかり準備して推薦受けるってことは、逆に一般入試の準備が遅れるわけだし、一長一短ある中で、自分で決断して受けるわけでしょ。決断して受けるにあたって、どういうところを知ってもらって、どういう自分を表現して、選んでもらおうって思ってたの?

 

はい。最初、自分が受けて良いのかなって思っていたんですよ。芸術科のある高校ではないですし、普通科ですし、美術の先生も5人変わって(笑)、ぜんぜん高校で携われてないんですよ。平岡先生にそれを言ったときに、結構キョトっとした感じで(笑)、、、「ぇ、なんでっ??」って言われたのを覚えていて。「そんなの関係ないよっ!?」って言われたことで、不安もなくなりました。確かに自分は、他の高校の子たちより美術に関われてないかもしれないけど、いろいろ調べたり工芸専攻に行こうって決めた日から出来る限り展覧会も観に行って、人と会ってきて、話してきたので。整った環境ではなかったかもしれないけど、自分から動いて、なんか面接みたいになってません??(笑)

 

→ううん、良い話。聞かせてー。

 

★あれ、ちょっと質問忘れてしまって、、。

 

→教わる環境としては不利かなと思うこともあったけど、自分から動いて、学ぶ機会をつくって、体験・経験で勝負したってことだよね?陶芸家の工房に足を運んでお話を聞いてきたり、アポイントのみの展覧会に自分でギャラリーに連絡して人間国宝の作品観てきたり、うるま市在住なのに頻繁に那覇にも作品展観にいったり、アーケイドの休みの日も、とにかく何か吸収しようって動いてたのは伝わってるよ。

 

★はい。陶芸家の方の工房でお聞きした話は、教科書には載ってない生のお話で、沖縄県立芸大の大学院を出た方だったので、いろんな学生生活のことも知れて、そういう経験は私だけの財産なので、自信をもって推薦入試の面接でも「私」の体験を伝えることができました。

 

→次の質問。大学ではどんなことを学んでみたい?

 

★やっぱり陶芸を専門的に探究したいですね。県芸は、沖縄の土から研究する授業もあるみたいなので、県立芸大でしか学べない授業をしっかり噛みしめて学んでいきたいですね。

 

→夢は美術教諭だと思うんだけど、個展とか展覧会もやってみたいとかある?

 

★ありますね(笑)。教員になってから、生徒に慕われたいですし、美術の先生としてしっかり作品制作について教えてあげられる経験を積みたいです。先生は日頃こんな活動してるんだよーって、一人の人間としての創作活動も生徒に魅せて行ける先生になりたいですね。

 

→なるほどね。教科書の内容を紹介していく先生っていうより、先生の人生自体が美術の教科書みたいに、経験からくる説得力を持っていて、人と人とで向き合いたいってことね。

もう1つ。高校3年生の時に観た展示会で、何か印象に残ってるものってある?

★はい。いつも話してる内容ですけど(笑)

 

→うん、ここでは一回目だから(笑)

 

★自分が一番衝撃を受けたのは、やっぱり金城次郎さんの展示会ですね。最初は、魚の模様とか海老の模様って、誰が描いてもそんなに変わらないんじゃないかなって思っていましたし、展覧会に行く前に調べ物をしていてもそういう印象だったんですけど、実際展覧会に行くと、1つ1つ全然表情が違うんですよ!怒ってたり、笑ってたり、ほんとに飛び出してきそうな活き活きとした表情で、誰でも描けると思っていたモチーフで、こんなにも違うように陶芸で表現できるんだなって思って。自分が陶芸を学びたいっていう想いの背中を押してくれた展覧会でした。

 

→なるほど。ギャラリーラファイエットさんにも自分でアポとって、予約制の内覧会に足を運んだと思うんだけど、普通の美術館での展覧会と違うじゃん。そういうのはどうだった?

 

★会場に私一人だったんですけど、作品を観ていたら、気づいたら1時間ぐらいたってて(笑)。オーナーさんを待たせてしまっていたのかもしれないですね。そのオーナーさんが、「作品触って良いよ。」って言ってくださって。人間国宝の作品にまさか触れるなんて夢にも思ってなくて。そういう貴重な経験は、美術館では味わえないものかもしれません。

 

→ほんと貴重な機会だよね。作品を観た印象とかもっと教えてほしいな。

 

★はい。曲線の中の曲線。これに自分はすごく惹かれて。つまり、器の曲線の中の、描かれた曲線の美しさなんですが。ほんとに海老が飛び出してきそうで(笑)。観てるだけで笑みがこぼれてきて。人間国宝の方の作品の勝手なイメージ、堅苦しい感じが消えてなくなりました。これで食事できたらホント楽しいんじゃないかなって。いまでこそ難しいことかもしれないですけど、勿体なくって。でも当時の人たちは楽しく気楽に使っていたかもしれないですし、日常の中での芸術作品の在り方や必要性について、すごく考えさせられる機会でした。

 

→最近だったらインスタの映えるとか、オシャレなものとか、飾ってカッコイイものとか、家具のデザインを邪魔しないシンプルなものとか、非日常的な奇抜なものとか、そういったまた別の観点で工芸品を買う機会もあるかもしれないけど。いま七海さんが言ってたような楽しいとか、実はとっても重要だもんね。金城次郎さんの沖縄への素朴な眼差し。驚きって言った方がいいのかな。そういうの大事だよね。

 

★そうですね。あと話が変わりますが、驚きと言えば、國吉清尚さんの展覧会も印象に残っています。那覇市立壺屋焼物博物館で開催された「吼える土~壱百零八手~」ですね。まず、オブジェがすごく多くって、びっくりしました。何ていうんですかね、土のオブジェって、結構似ている印象があったんですけど、國吉さんのは別格だったんです。鎧のような剣道の胴のような作品だったんですけど、よく見るとその中に傷みたいのがいっぱいあって、「えぇー!!!」って(笑)。土でこんな表現ができるのー?ていうのが。國吉さんはホントに凄くて。土に気持ちが籠められているっていうか、観ていて気持ちよかったです。異質な作家さんだと思うんですけど、土の可能性が知れて、驚きを感じました。卵みたいなのもあって(笑)

 

→卵は、確か國吉さんがたどり着いた晩年のスタイルだよね。やっぱりそこに目が行くんだね。

 

★はい。ぜんぜん同じ人の作品には見えないようでいて、でも気持ちは同じ國吉清尚さんのものだなって伝わりました。作り方や技法が違っても同じ人だとわかる、表現ってそういうことなんだなって教えてもらえる展覧会でした。

 

→なるほど。娘さんの作品も良いよね。

 

★はい。何ていうか、野性的っていうかですね。100人いて100人が綺麗っていう意味での綺麗とはもしかしたら違うのかもしれないですけど、3人の方の作品好きなんですよ。沖縄の野性的な表現に惹かれる自分を知ることができましたね。どういう陶芸作品が好きかっていうのが、最近少しずつ分かってきた気がします。

 

→うんうん。大学に入学して、同じ工芸専攻の中に勿論県外出身の子も沢山いるだろうし、育ってきた環境も違うしね。お互いの感性を大事にしてほしいよね。七海さんは七海さんで、いま感じてる美的感覚も忘れず、仲間たちとも切磋琢磨刺激しあいながらね。

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